予算や持ち物をチェックしているMS家からお届けします!
先日、家づくり雑貨のリストチェックをしていて
なにげなーくネット通販を見ていたら、
イームズチェアのリプロダクト発見。
(これはリプロダクトというかミニチュア…)
どんなもんかと軽い気持ちでレビュー読んだら
ちゃぶ台をひっくり返したくなりました…
「買って一ヶ月で壊れました。
イームズの椅子ってすぐ壊れるんですね」
(個人情報特定を避けるため口調を変えています)
ねえちゃん、それイームズちゃうし!!!
本物じゃないし!
うちのイームズワイヤー峰不二子様なんて
50年以上生きてますが!
と小一時間説教を、
いや、なんならモダンデザインとは何かから
丁寧にお話したくなりました!
夫氏「でもさ
そもそも本物ってなんだろうね?」
?!
夫氏「だって、うちのヴィンテージの椅子たちだって
イームズさん本人が一から手作業で作ったわけじゃないよね?
何が本物なんだろう?」
それに今イームズさんが亡くなったのに
「ハーマンミラー」という会社がイームズチェアを作り、
それが「正規品」と呼ばれているもんね。
いったいどういうことだろう?
そういえば、こんな話も。
前回ソファ特集で取り上げた「Poe t Sofa(=詩人ソファ)」
これはデンマークのOne Collection社が「正規ライセンス」
をゲットだぜ!して製作しています。
Chieftain Chair | House of Finn Juhl
でもこの家具のファン(家具にもファンがいるんです!)は
「そんなの本物じゃない!リプロダクトだ!」
なんて言っています。
いったいどういうこと?
というわけで、ちまたに溢れるいろんな
「イームズチェア」「ボールクロック」
↓リプロダクト
↓正規品
などの正体に迫り、
リプロダクトや正規品をどう選ぶか考えます!
なんか難しい話は需要ないだろうから、
あとはベアブリックよろしゅう!
ベアブリック「?!嫁さん、大学では法律勉強したんじゃ…」
そんなの10年以上前だよ!
はい、がんばって。
ベアブリック「お、俺が説明するぜ」
じいさんず「孫よ、期待しとるぞよ」
ベアブリック「そもそもデザインには意匠権ってやつがあるんだ。
意匠権ってのはデザインした人がこれは僕のデザインだ!と独占できる権利。
だから意匠権があるのに、勝手にそれをコピーして作るとアウト!
ただ、意匠権は永遠に続くものではない!
日本だと20年!
ヨーロッパは25年!
アメリカは14年!」
ポニー「なんでせっかくデザインしたものなのにそれだけしか保護されないの?」
ベアブリック「それはね、若手のデザイナーたちの活動を元気にするためだよ。
音楽にしろ、映画にしろ、新しいものを創るにはまずは古きに学ぶ。
そして新しく出来上がったものには
古いものの要素が入っている。
例えば、パントンチェア。
これは巨匠リートフェルトのジグザグチェアから着想を得たとも言われる。
280 ZIG-ZAG(ジグザグ チェア) Cassina | カッシーナ・イクスシー
似通っているものを永遠に全部アウトにしてしまうと
新しいものは生まれなくなってしまう。
だから期間が決まっているんだ。」
ポニー「だから巷にはハーマンミラー製じゃないイームズチェアやら
フリッツハンセン社製じゃないセブンチェアがあるんだね」
(この子たちはフリッツハンセン社の中古)
ベア「そう、そういう意匠権が切れたものを製造したものがリプロダクトと呼ばれるんだ。最近はジェネリック医薬品と似ているからジェネリック家具とも言われるね。
でも生きてるデザイナーからすると複雑な心境だよね。
アールニオおじいちゃんはこう言っているよ。
''Copying is today’s flattery. You have to take it as a compliment. In practice, however, counterfeiting is stealing not only from me, the designer, but from the entire production chain.”
リプロダクト製品はのぅ、まあわしの製品が愛されとるという一種のお世辞と取るしかないのぅ…
だたのぅ…実際には、偽造はワシというデザイナーから盗むだけじゃのうて、
製品の製造全てに携わるものから盗んどるということなんじゃよ…
(Design Storiesより引用・訳by 嫁氏)
ポニー「正規品って言葉も聞いたことあるんだけど…」
ベア「正規品はその家具製造する権利を持つ会社が作った製品のこと。
例えば、ネルソンおじさんのボールクロック。
これはVitraという会社が『作っていいですよ』
というライセンスをもらって復刻製造している。
でも、こっちの黒いボールクロックは
ハワードミラー社製。
ハワードミラーはハーマンミラーの息子たんの会社で、
http://www.howardmiller.com/our_history
こっちもライセンスを持ってるから作ってるんだ」
ポニー「ややこしい…」
ベアブリック「まあとにかく、デザイナー本人やその財団から
作っていいよ
って権利をもらったら正規品ってことになる。
正規品のメリットは
①品質が保証されている
→手入れ次第では長く持つ。
②保証期間がある場合も
デメリットは
①高額になる場合もある
②日本では手に入りにくいことも
ポニー「でも待って!
復刻製造ってことは許可は得ているけれど
本物じゃないってこと?正規品も結局はリプロダクト?」
ベアブリック「それは本物をどう考えるかじゃない?
上に挙げたポエトソファの大ファンは今の復刻品は
正規品でもリプロダクトだ!
オリジナルだけが本物!っていうし、
そこまでじゃない人は正規品を本物だというからね」
ベア「で、嫁さんはリプロダクト思うの?」
自分が気に入ったらならどちらでもいいと思う。
リプロダクトのメリットは
①みんなが買いやすい値段
②日本じゃ正規品が手に入りにくいものも買える
ことだと思うから。
(日本でば正規が手に入りにくいコニャックチェアのリプロ)
もし、正規品以外はダメ!ってしてしまうと
ミッドセンチュリーの好きな人が減ってしまうと思うよ。
だって、みんながうちみたいに家具に命かけてるわけじゃない。
お子さんがいたらお金もかかる、
家だけじゃなくて旅行に行きたい人もいる。
デザインを気軽に楽しめるという点でアリだと思う。
そもそもイームズさんの椅子作りのスタートも
「安価でいいものをみんなに使って欲しい」
というところからスタートしたわけだから。
ただし、最初にちゃぶ台ひっくり返したような粗悪品には反対!
愛のないリプロダクトは大反対!
リプロダクトのデメリットって
①どれだけ似せようとやっぱりなんか違う
②中には粗悪なものもある
ことだと思う。
形だけ「イームズ」にしても、座り心地は最悪、
すぐ壊れてしまうようなものを大量生産、大量廃棄するのは
家具以前にものづくりとして問題だよ!
ベア「じゃあなんでうちにはリプロダクトがほぼないの?
あ、ミニチュアは別として。」
それは、MS家の家具の買い方が
「巨匠の考え、思いをよく知ってから買う」
いくらリプロダクトはアリと言っても
実際自分ちに置くとなったら別!
例えば、柳宗理通称ソーリーのものづくりへの思いとかさ
アールニオおじいちゃんの面白椅子デザインとかさ
そんなの聞いたら思いの込められた正規品を置きたいと思うんだよ!
汗と涙の結晶を座るだけ、使うだけで感じるわけだよ!
前も書いたけど、そこは何を優先するかの違いだと思う。
だから、結局はその家具の使い方や優先度で何を購入するかを
決めたらいいと思うよ。
でも、そのときにはぜひデザインした人、作った人への敬意を払った商品を、ずっと使えるように選んで欲しいと願います。
ちなみにうちのこの子は刻印がないから正規品かはわかんない。
たぶんそうだけど。
でも、嫁氏はこの子が大好きだー!
刻印じゃないです!愛です、愛!
あなたの隣の家具を愛せよ。
by家具の愛の伝道師