先日久々に遠出で兵庫県西宮へ。
まずはお昼ご飯。
結婚記念日の週だったので
好きなものをいいよと言われ
ステーキを食べる。
そのステーキは嫁氏好みで美味しかった。
でも「嫁氏ごのみ」って言っても
美味しいかどうかや好みって主観だ。
この美味しさってどうやったら
行ったことがない人に伝わるだろう?
ビジュアル?
確かに見た目は大事。
でも感触は?味は?
どうやったら自分の感じたことを
相手に伝えることができるだろう?
さらには食べ物だけではない。
アートや家具、自然の風景。
自分がいいと思ったものを
人に知って頂くにはどうすればいい?
芸術や味覚は感覚だから
理解できないのは仕方がない?
そうではないと思う。
感覚でいいと思ったものや
自分が生み出したものの良さ
それらを表現する。
表現によって人に理解してもらったり
人を理解しようとすることができる。
実は100年も前に
それをやっていた人たちがいた。
それはドイツのある教育機関。
バウハウス
今回はそのバウハウス展を見に
西宮市に行ってみた。
バウハウスとは何か?
簡単にいうとこんな感じ。
・バウハウスはドイツにあったデザインを学ぶ学校
・ヒトラーに閉校されるまでたった14年のみ存在
・なのに現代のデザインに大きな影響を与えた
このブログで何度か取り上げてきたので
詳しく知りたい方はどうぞ↓
↓バウハウスに影響を与えた人たち
デンマークの美術館でもバウハウス展をやっていた。
今皆さんが当たり前に使っている
シンプルなデザイン。
こういうのとか
こういうの。
さらにはニトリさんやイケアさん。
歴史にもしもはないけれど
もしバウハウスがなかったら?
私たちはこんな椅子に座り
こんなチェストを使っていたかもしれない。
しかもめちゃくちゃ高い値段で
買うことになっていたかもしれない。
彼らがやってきたのは
世の中のみんながいいデザインを
使えるようにしようということ。
ポスター バウハウス Bauhaus-ausstellung 1923年
そのために一見相容れない
「芸術」と「工業」を
仲良くしてあげた。
だからと言って粗悪なものを安く
ばら撒こうというのではない。
製造ラインを利用しつつも
手仕事に頼り過ぎない。
芸術のための芸術なのでなく
みんなが使うためのデザイン。
北欧家具やミッドセンチュリーにも
影響を与えた考え方だ。
何度も言うけどたった14年。
それだけなのに
現代のデザインに影響を与えた。
本当にすごいことだ。
だからMS家もバウハウスが好きで
家にポスターを飾っている。
そんなバウハウスは
2019年で創設から100周年。
そこで全世界でも日本でも
展示やイベントをやっている。
関西にも巡回展がやってきた。
場所は西宮の大谷美術館。
中庭の庭園が美しい美術館。
中に入ってみよう。
※以下写真撮影可能な部分のみ撮影。
入り口に椅子さん!!
バウハウスの先生もやってた巨匠ローエの
バルセロナチェア。
軽やかで曲線が美しい椅子。
こっちは生徒だったマルセルブロイヤーが
デザインしたワシリーチェア。
今では当たり前にみるパイプ椅子だけど
布張りが当たり前だった当時は画期的だった。
入り口でチケットを買うと
面白い仕掛けが。
切り込みが入っていて折り曲げて
いろんな形を作ることができる。
これはバウハウスのアルバース先生が
学生に出した課題に関連するもの。
「紙を切る折る曲げるだけで何か作れ。
つけ足すのは禁止。無駄にするのもダメ」
紙はシンプルで可能性を秘めたいい教材だった。
それをチケットにしちゃうとは
なんとも憎い演出だ。
入り口付近には他にもマッチ棒を使った
頭の体操など体験できるものが置いてあった。
では展示本編へGO。
この展覧会では
・バウハウスの教育システム
・どんなものをデザインしたか
・どんな影響を与えたか
などを体験しながら学ぶことができる。
当時の椅子とか椅子とか椅子とかもいいけど
体験コーナーも充実。
体験コーナーは撮影可能。
クリックで再生↓
そこで感じたのはデザインそのもの
だけでなく表現や教育のあり方だった。
バウハウスの教育は
「基礎教育」→「専門教育」
でできている。
素材などについて基礎を学んでから
専門の工房に分かれて学んでいく。
(『Pen (ペン) 〈2019年4/1号〉』より)
入学者は美術学校の出身者など。
なのになぜ基礎教育が必要なのか?
それはバウハウスが目指したのが
社会に役に立つデザインの活動だから。
みんなが使えるものを生み出す
みんなの役に立つものを生み出す
そのためには日常を観察し自分で考え
考えたをアウトプットする力が必要。
だから授業では基礎となる
「観察力」「表現力」を養う。
授業は先入観を無くし学生たち個人の
本来の力を引き出すようなものだったとか。
ではいいデザインができたとして
みんなが買えるようにするには?
それは量産することだ。
職人だけの力に頼らず生産ラインを整え
製造に関わる人や機械に分業させる。
じゃあ量産できるにはどうしたら?
それは構造のシンプルさやコストはもちろん
みんなが理解できる表現をすること。
モデルを見せて
「こんな感じ」では天才しかわからない。
そうではなく関わる人みんながわかるように
設計図や数値化したもので表現。
例えばバウハウスの基礎教育では
感覚を表現させる授業を行っていた。
素材を触ってみると様々な
感覚が湧いてくる。
ザラザラ
ふわふわ
サラサラ
痛い
優しい
柔らかい
でも擬音語や擬態語だと
受け取る側に伝わらないことがある。
そこで彼らがやったのがザラザラならば
どの程度ザラザラかをグラフ化。
あるいは表にして数値化する。
そうすることで誰が見てもわかる表現で
お互いに共通理解を図ろうとした。
ものづくりに必要な観察と表現の力を育て
人としての力を育てるカリキュラム。
それがバウハウスの基礎教育だった。
これってデザインだけでなく
日常にも応用できると思う。
冒頭のお肉の話。
店へ行った→美味しかった
これだけじゃ伝わらない。
・ビジュアルを用意して言葉を添える
・皿からはみ出す肉がドーンと出た
・お皿が熱々で肉汁が飛んでくる
・上のバターがすぐに溶けていった
・肉は赤身で食べ応えがある
・脂肪の多いお肉が苦手な人も食べやすい
つまり何かいいなと思って伝えたいなら
理解してもらえるよう表現を工夫する。
別にバウハウスのようにグラフに
しなくてもいい。
言葉の使い方とか身振り手振りとか。
そのことが価値観の違うもの同士が
理解することに繋がるのではないか。
もちろん時にはどんなに表現しても
理解しえない相手がいるのも事実だけど
それはまた別問題だ。
そうではなく通常のコミュニケーションの話。
自分が美味しいと思うもの
自分が素晴らしいと思うもの
それを他の人がそうは思わないと言った場合。
価値観が違うと言えばそれで終わる。
そうではななく相手の話を聞きながら
なぜいいかを工夫して表現する。
そうすることでお互いの理解に
繋がることがあるのではないだろうか。
そしてそれができるのが
教育なのではないか。
バウハウスって今まで
ものすごい才能の集団だと思っていた。
(『Pen (ペン) 〈2019年4/1号〉』より)
実際そうだったのが展示でわかったけど
それ以上に感じたのが人間らしさだった。
世の中の役に立とう
そのために道具や言葉を駆使して
表現をしていこう
そういうプロを育てていこう
そんな人間らしい情熱や優しさだ。
そんな充実した展示会だった。
ぜひ近くで機会があればバウハウス展へ。
ちなみに売店でミニチュアを買ってしまった。
バルセロナチェアなどの現行品を作るKnoll社
が出しているバルセロナとワシリー1/100。
組み立てたらこんな感じになるけど
もったいなくて未だ眺めているだけ。