何してるの?
確かに生きるのに最低限の算数は大事だ。
もちろん椅子オタク!
ポニ「ほら!また始まった!話進めて!」
デンマーク旅行記第16弾。
前回の続きでデンマークの
デザインミュージアムをご紹介。
デンマークの教育制度を知り
デザインのオタク気質に迫る。
デンマークのデザインをみていると
オタク的な気質を感じる。
過去の名作や他国のデザインを研究し
使いやすさと美しさを兼ね備えた家具を作る。
だから50年以上前のデザインが今も生産され
世界中で愛されている。
そのオタク気質は
教育制度とも関係ある。
それはプロを育てる教育だ。
デンマークは高校進学率が約45%。
日本の約98%より低い。
それには訳がある。
・義務教育は16歳の9年生まで。
・14歳で進路指導があり中三で長期実習。
・卒業後は高等学校か職業別専門学校
・専門学校では半分以上が実習
・入学試験がない→塾?なにそれ?
・義務教育後ギャップイヤーOK
(将来について考える時間)
つまり早い時期からなりたいものを
決めそれぞれの道のプロを目指す。
もちろんデメリットもある。
早いうちに進路を決めて違った!
と思うこともあるだろう。
そして頑張って技術を手に入れても
需要が減り仕事がなくなることも。
ただデンマークの場合は教育費が無料。
いつでもやり直しができる。
実はそのことで教育費が圧迫している
という議論もあるそうだ。
ただ早期に本当にしたいことを選択し
実際に使える技術や知識を磨く。
アレもこれもでなく1分野をオタク的に学び
プロの技術者や職人を育てる。
だから家具の世界でもデザイナーや
職人は尊敬の対象となる。
デンマークは家具作りなどの
木材加工の技術が高い国だ。
それはこちらでも書いた。
特に家具に関していうと
マイスター制度がある。
これはいわゆる師弟制度。
マイスターの資格を持つ
親方から学び試験を突破して一人前に。
師弟だからといって「見て学べ」
ではなく座学もある。
そして仕事として行う場合は
給与もきちんと支払われる。
だから職人の地位は高く尊敬される。
実際に名作椅子をデザインした巨匠も
マイスターの資格を持つ人が少なくない。
デンマークのハンス・J・ウェグナー は
17歳でマイスターになった。
つまりここではオタクをとことん追求し
手に職をつけたプロになれる。
そのオタクな部分はデザインにも見られる。
研究熱心で自国の過去の製品のみならず
他国の技術も研究するデンマーク。
それはデザインミュージアムの
展示からも感じ取れる。
このミュージアムにはデンマークの
デザインコーナー以外もある。
例えばイタリアの家具コーナー。
カスティリオーニのセッラ
あ、これ椅子です。
↓作者はアルコランプのおじいちゃん
メンディーニのソファ
↓キッチングッズもデザインしたおじいちゃん
ワンダースのひも椅子
↓イケメンおじさまはこんなのもデザイン
そして館内にはポスターもたくさん。
デンマークのポスターももちろん。
だけどフランスのポスターも。
ロートレックだ。
デンマークのデザインはイタリアや
フランスのそれとはだいぶ違う。
けれども共通点もある。
美術館の中では広く場所を取り
それらを深く知ることができる。
この美術館は特別展も大々的に行う。
少し前はLearning from Japanese展。
つまり日本のデザインの紹介。
前にも書いたようにジャポニズムは
デンマークデザインに影響を与えた。
今回はドイツのバウハウス展。
バウハウスはドイツのデザイン学校で
モダンデザインに影響を与えた運動。
それまで装飾的な家具が多かった。
彼らは合理的でみんなが使いやすい製品を
と多くの取り組みをしてきた。
ヒトラーによって閉校されるまで
14年しか活動しなかった学校。
でも現在私たちが使うモダンな家具は
バウハウスがあったからこそ存在。
詳しくはこちら↓
戦時中アメリカにはバウハウスの
巨匠が戦争で亡命してきた。
それがイームズさんなどの巨匠たち。
そしてそれに影響を受けたのが
デンマークのウェグナーやヤコブセン。
北欧とアメリカ、ドイツは
デザインの上でお互いに影響がある。
それを表す貴重な資料が膨大にあった。
内容がわからなくても
見て視覚的に体験できる。
感覚的にも。
椅子に座れる。
バウハウス塗り絵。
大人だけでなく子供も気軽に
デザインに触れることができる。
デンマークがいかにオタク的に研究し
デザイン大国として発展したかを
体験しながら感じ取れた
日本では大学の無償化について
賛否両論となっている。
なぜか?
それは日本の場合みんなが
大学に行こうとしているから。
本当に学びたい学生さんにとっては
道が開ける喜ばしいこと。
だけど本来大学って研究機関のはずなのに
日本では就職訓練校のようになっている。
そして大学に入りさえすればいい
という学生さんも残念ながらいる。
それは勉強が好きでない子が無理に
大学に行くことになる。
嫁氏はいくつかの高校で仕事をした。
大学を目指す進学校もあった。
毎日誰かがトイレにタバコを詰まらせ
近所の公園で飲酒する学校もあった。
そんな子たちは中学で落ちこぼれとみなされ
自信を失い大人を嫌い反抗していた。
でも彼らにも得意なことがあった。
お化粧がプロ並みに上手い子
バイクの知識が半端ない子
激ウマのケーキを作る子
彼らの得意な分野を振ると
とても嬉しそうに話をした。
得意なオタク分野を極めれば
伸び伸び勉強できるかもしれない。
だけど社会的には難しい。
就職は高校卒業が要件な場合が多い。
さらに日本は大学卒業者が給料が高い。
デンマークでは同一賃金同一労働で
同じポジションなら差がない。
※技能などによる差はあるようです。
果たして日本の高校で勉強した内容を
今使う人はどれだけいるだろう。
もちろん学び自体は無駄ではない。
そして生きるための最低限の知識は必要だ。
けれども勉強を必死にしたい子もいれば
勉強は苦手でも技術がある子もいる。
人によって得意不得意は違うのに
全員に「高等な教育」をという空気感。
これは議論の余地があると思う。
みんなとは言わないけど
日本にはオタク的な気質がある。
海に囲まれた小さな国で
細かい作業繊細な技術も得意としてきた。
日本の文具は細かいところまで
気が利いていて素晴らしいものが多い。
数年前海中で錆びないボルトで有名になった
竹中製作所はUAEにまで進出した。
マルニ木工はデザインの力と職人の技術で
復活を遂げ世界に羽ばたいた。
家電も家具も他国から技術を取り入れ
よりいいものに発展させてきた。
専門分野をとことん追求して
いいものを作るオタク気質だ。
なのに社会人になるとあれもこれもできる
「平均」が求められることも多々ある。
そして高い技術を持ったプロや
職人の減少や地位の低下。
デンマークと日本は気候も考え方も違う。
けれども似ているところがある。
研究熱心でアツいオタク。
福祉の話でも書いたように彼らのやり方が
そのまま日本に合うとは思わない。
彼らのシステムにも
メリットデメリットがある。
でもデンマークでは職人の地位が確立され
彼らの製品が国際的に評価されるのも事実。
そう考えると日本ももっとオタク的に
生きられる土壌があってもいいのに。
子供達が自分らしく生きられる
選択肢が増えるかもしれない。
日本の高い技術が継承され職人さんが
生き生きと働けるかもしれない。
そんなことを考えながら美術館を後にしました。